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Chirascan -特徴-

円二色性分散計Chirascan

円二色性分光法の新基準

  • 短時間でより正確、精密な測定を可能にする卓越した測定感度
  • セットアップ、描画および解析を容易にするパワフルなソフトウェア
  • アプリケーション範囲を最大まで拡大する包括的なアクセサリーラインナップ
  • 所有コストを最低限に抑える低消耗品使用量

概要

Chirascanはパワフルな最新の円二色性分散計であり、生体分子の二次構造やコンフォメーション(立体構造)をスピーディー、高感度かつ直接的に観察することができます。Chirascanの主要なアプリケーションはタンパク質の二次構造の究明や、三次構造の研究です。これらはペプチド骨格の芳香族側鎖やジスルフィド結合により誘発するCDを測定することにより行われます。

タンパク質の二次構造や三次構造は、温度やpHといったストレスにより変化します。また、環境を変化させながらCD測定行うことで、コンフォメーションの安定性を評価することも可能です。バッファーコンディションを最適にすることで、薬剤の寿命が向上することから、生物学的製剤の開発や製剤試験を行う場合、このような方法でCD測定を活用することには重要な役割を持ちます。また、CDは異なるプロセスやソースにより生成された物質の立体構造の同等性の検証や、新しい種類のタンパク質が正しくフォールドしているかどうかを確認するために利用されます。

今日、Chirascanの性能は円二色性分散計を評価する上での新基準となっています。

測定性能の優位性および光スループットとの関連性

円二色性分散計ChirascanおよびChirascan-Plusは優れた感度および測定速度を有します。このことは、Chirascanシリーズの持つ高い光スループット(特に遠紫外領域において顕著)によるものです。下図に各バンド幅に対する光フラックスの放射スキャン結果を示します。

円二色性分散計Chirascan光スループット

360nmから180nmの全UV波長域における、バンド幅1nmでのフォトンフラックスは1013/秒を超えています。この値は他の商用円二色性分散計のフラックス強度を遥かに超えています。さらに大きな光強度が必要になった場合は、短波長側178nmまでの波長域でバンド幅を4nmまで広げることが可能です。このことはプリズム方式の円二色性分散計において非常にユニークな特徴であり、Chirascanの革新的な光学デザインに由来します。つまり、Chirascanはバンド幅1nmにおいて既にフォトンフラックスが他の円二色性分散計よりも優れているにも関わらず、さらにひと桁大きな光フラックスまで上げることができる能力を有していることになります。

Chirascanが優れた光スループットを有していると言うことは、同じ測定時間で高いクオリティのデータを得ることができることと意味し、同じクオリティのデータを得るための測定時間が短くなるということと同義です。Chirascanシリーズの上位機種であるChirascan-plusでは、より感度の高いフォトダイオードディテクターが採用されていることから、更に優れたパフォーマンを得ることができます。優れた光スループットの重要性について、いくつかの例を下述します。

  • 円二色性分散計の必要性が高い研究機関では、データのクオリティを損ねることなく研究の生産性を高めることが重要視されています。
  • CDストップトフローなどのサンプルを消耗する実験を行う場合では、適性なクオリティのデータを得るための測定回数(つまり、合計サンプル消費量)が少なくなります。例えば光スループットが10倍になると、必要なサンプル量は三分の一になります。
  • 一度の測定で、より多くのデータを得ることができます。例えば、遠紫外波長域スキャニングと連続温度変化による熱融解を組み合わせることにより、約1時間程度でタンパク質の二次構造変移の全体像が分かるデータを得ることができます。

ステップスキャンの利点

ChirascanおよびChirascan-plusは、いずれもステップスキャン方式でCDスペクトルを測定します。CDシグナルはスペクトルの個々の波長ポイントで、ユーザーにより設定された測定時間でサンプリングされます。各波長ポイントでのCD値は、数万回サンプリングを行った平均値であり、CDスペクトル中の波長ポイント数はユーザーにより設定されます。

ステップスキャンが採用された理由は以下の通りです。

  • 各測定ポイントはモノクロメーターにより固定されていることから、スペクトル中の各CD値を正確に測定することが可能。
  • 各CD測定では付随誤差があることから科学的妥当性がある。
  • スムージング処理を施す際に、潜在的にCDスペクトルを歪曲させる可能性のあるエレクトロニックフィルタリング(時定数フィルタリング)が使用されない。

前述の通り、Chirascanは非常に高い光スループットを有していることから、スムージング処理が施されていない生データのままでクオリティの高いCDスペクトルを測定することができます。一般的にはスムージング処理を行う必要はありません。しかしながら、必要に応じて、ランダムノイズ成分を除去するために、測定後にフィルタリング処理を行うことが可能です。測定後スムージングの主な利点は、下述の2点です。

  • 残差プロットが生成されることから、スムージングプロセスによりデータが歪曲されていないかどうかが明らかである。
  • このスムージング処理は可逆プロセスであることから、オリジナルの生データは決して失われない。

もちろん、測定後フィルタリング処理でもオーバースムージングは起こり得ます(下図を参照)。しかしながら、オーバースムージングかどうかは明白に判断することができ、補正することが可能です。

連続スキャンの場合は、上記のステップスキャンの特徴とは大きく異なります。

  • 測定はモノクロメーターが移動している最中に行われる。
  • 時定数フィルタリングによりシグナル強度が低下し、スペクトルの本当のクオリティが分からなくなる。
  • 測定中の誤差を検出できない。
  • 測定と同時にフィルタリング処理が施されるため、潜在的にデータを歪曲する可能性がある。
  • エレクトロニックスムージングは不可逆プロセスである。

連続スキャンにより測定されたスペクトルは、一見するとノイズレベルが低く感じられます。しかし、データ取得と並行してスムージング処理が施されていることから、ユーザーはCDスペクトルの本当のクオリティを評価することができず、そのスムージングプロセスがデータを歪曲していないかどうかを調べる術もありません。このような方式でスペクトル測定を行う妥当な理由は、クオリティの低いデータを隠すためにスペクトルを歪曲するということ以外に考えられません。

Chirascanと他の円二色性分散計のパフォーマンスを比較する場合、正当な比較結果を得るためにステップスキャンモードで測定されたデータを用いることが重要となります。

測定後スムージング

Chirascan測定後スムージング1Chirascan測定後スムージング2

左上図のCDスペクトルはChirascanによって測定された、スムージングされていない生データです。この例では、意図的に小さなCDシグナルを高スキャンニングスピードで測定し、ノイズが非常に大きなスペクトルが表示されています。このスペクトルに対して過度なスムージング処理を行った結果が右上図となります。スムージングにより生成されたスペクトル(青色)は非常に滑らかになっていることが分かりますが、生データ(赤色)と比較することでデータが歪曲されていることが直ちに分かります。また、このデータの歪曲は、残差スペクトル(緑色)がX軸に対してランダムではないことからも容易に判断することが可能です。

Chirascan測定後スムージング3Chirascan測定後スムージング4

同じスペクトルに適切なスムージング処理を施した、歪曲のない結果が左上に表示されています。残差スペクトルを観察することで、データからランダムノイズのみが取り除かれていることが分かります。

下図に更に典型的な例を示します。スムージング処理を施されていない生データは、Chirascanを用いて38秒間の測定時間で測定されたものです。Chirascanは遠紫外波長域においても高い光スループットを有していることから、非常にクオリティの高いスペクトルが得られています。しかしながら、測定後スムージングによりランダムノイズ成分のみを取り除くことが可能です。

Chirascan測定後スムージング5

上記の例を要約すると、エレクトロニックフィルターを使用する連続スキャンは滑らかなCDスペクトルを取得することができますが、潜在的にスペクトルを歪曲する可能性があることに対して、ステップスキャンはフィルタリングを施さない生のCDスペクトルを取得することから歪曲の危険性がないということです。そして、必要に応じて、適切にコントロールされた可逆的なスムージング処理を測定後に施すことが可能です。

長期間安定性および正確性

円二色性分散計は長年にわたり使用される機器であることから、長期間安定性は最も重要な要素のひとつです。下図は、出荷直前の新しいChirascanと、ほぼ寿命に達しているランプを搭載した製造後18ヶ月のChirascanを用いて測定した、ビタミンB12のCDスペクトルです。どちらのスペクトルもスムージング処理を施していない生データで、同一サンプルを用いて連続して測定されたものです。その時の測定条件は下表の通りです。それぞれの機器のベースラインスペクトル(青色)が重ねて表示されています。

Chirascanランプ安定性1Chirascanランプ安定性2


Experimental Conditions
Sample Vitamin B12
Concentration 0.2mg/mL
Wavelength range 800nm - 250nm
Bandwidth 1nm
Step size 1nm
Duration of each scan ~ 10 minutes
Pathlength 5mm

下図は、それぞれのCDスペクトルからベースラインを差し引いたものを重ねあわせて比較したものです。この比較から明らかな通り、2つのスペクトルの間で相違は全くなく、Chirascanの長期間安定性と正確性、およびランプが長寿命であることを明確に表しています。

Chirascanランプ安定性3

低窒素消費量

円二色性分散計の使用中は下記の目的のために、定常的に窒素ガスでパージする必要があります。

  • キセノンアークランプによるオゾン生成を避けるため。
  • 光路から酸素を取り除くため(酸素は遠紫外波長域の光を吸収する)。

Chirascanは全波長域において、パージに必要な窒素ガス流量はわずか5リットル/分です。

Chirascanのシール構造は非常に優れていることから、パージされていない状態で数日間使用されていなかったとしても、次回使用時の窒素環境は良好に保たれており、短い窒素パージ時間で遠紫外波長域での測定を開始することが可能です。

効率的に窒素パージを行うために、Chirascanには下記の3つの窒素ガス導入口があり、それぞれに流量計が設定されています。

  • a sealed lamp housing (requiring 1 l/min)
  • a sealed monochromator (requiring 3 l/min)
  • a sealed light path within the sample chamber (requiring 1 l/min)

サンプルチャンバー内の光路は、サンプルセルを交換するためにサンプルチャンバーを開放した際に、セルホルダー内の窒素環境を損ねないような構造を採用しています。そのため、研究中にサンプルを交換した後に、サンプルホルダー内の窒素環境が回復することを待つ必要がありません。良好な吸光度測定には、サンプルが含まれている場合と、含まれていない場合のディテクター電圧を同一の窒素環境下で比較することが要求されますが、Chirascanは、このシール機構により、吸光度スペクトルとCDスペクトルの同時測定のルーティン作業を可能にしています。

長ランプ寿命

Chirascanのキセノンランプは1000時間ごとに交換することをおすすめしています。ランプ使用時間は自動的に記録され、ランプ使用時にディスプレイに表示されます。

ソフトウェアアップグレード、ライセンスおよびアクセス

Chirascan専用ソフトウェアは、機器が使用されている期間中、無償でアップグレードされます。

データ表示、操作および解析を行うPro-Data Viewerソフトウェアは、オフライン作業のために、無制限に複数のコンピュータにインストールすることが可能です。

エミュレーターバージョンのChirascan制御ソフトウェアPro-Data Chirascanもまた無制限に複数のコンピュータにインストールすることが可能です。それにより、ユーザーはご自身のPCを用いて機器の操作のトレーニングを行うことが可能です。